第一章 崩された王国

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サラを送り出すとリディアはゆっくりと部屋を移動し、短剣を二本隠し持ってそっと部屋を抜け出した。 西の塔の廊下は不気味なほど静まりかえり、リディアの足音だけが響きわたる。 辺りを見回しながらそっと窓の外を眺めたリディアは目を大きく見開いた。 城の庭園から東の塔まで赤い炎に包まれていたのだ。ロイドの兵士が火を消そうとしているラグストの兵士を襲っている。 目の前の光景に呆然としながらもリディアは重たい体を引きずりながら懸命に歩き出した。 「早く、早く止めないと。」 大広間に着くとここもロイドとラグストの兵でいっぱいだった。 飛び交う剣の音や怒鳴り声、むせ返るような血の香りにリディアは気分が悪くなりながらも必死にサイモンとカルティスの姿を探した。 しかし二人の姿はどこにも見当たらない。 リディアはまた壁に手をつきながら他の部屋へと進んだ。
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