第一章 崩された王国

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「カルティス様」 リディアはカルティスの頭を膝にのせ、抱きしめた。 「リディア、早く、逃げろ。炎が迫っている。」 「カルティス様、私はもう一歩も歩けません。」 リディアは黙ってカルティスを抱きしめ続ける。 「君を、不幸にするつもりはなかった。」 「私は幸福です。カルティスさま、ほんの数時間前に私たち本当に幸せでしたわね。」 「エルディアは?」 「サラが連れ出してくれました。」 「君も共に逃げればこんなことには」 「ことの始まりは私のせいです。私こそあなたに謝らなければ。ごめんなさい。カルティス。あなたの幸せを壊してしまい。」 「私の幸せは君と共にあるんだ。だから今も幸せだよ。」 「私も、幸せです。最後まであなたと共にいられて。」 「「後はサラたちが無事に生き延びてくれれば…」」 二人はほとんど同時に言い、微笑みを交わした。 「「どうか私たちの魂が二人の元へ飛びその守護の力となりますように」」 ロイドの兵士が王の首をとりに炎の中をやってくると、リディアがカルティスを守るように頭を膝に載せ、抱きしめるようにおおいかぶさっていた。二人は炎に包まれはじめ、兵士はそれ以上近づくことができなかった。 例え近づくことができたとしても二人を引き離すことはできなかっただろう。
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