第二章 姫君の行方

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サーシャは一言でいえば気分屋だ。とエルは思う。それでもいつも厳しく時に意地悪だと思ってしまう彼女の母親、サンドラよりはずっと可愛い性格をしている。 今だってほら、エルが彼女のカバンを馬車から校門までの間だけでも持ってあげていることを喜んでいる。 「では気をつけて。」 エルが帽子に軽く触れて挨拶をするとサーシャは得意満面で 「帰りにはちゃんとここで待っているのよ。昨日は1分遅れたんだから。」 「気をつけます。」 エルはサーシャにもう一度挨拶をすると斜め向かいにある自分の学校へと向かった。 途中すれ違う女学校の生徒たちが嬉しそうにエルに挨拶をしてくる。エルは軽く会釈をしながら自分の学校へ入っていった。 「エルディアさまもお気の毒に。」 二人を乗せてきた御者がつぶやいた。 「本当ならばエルディアさまだってこの女学校の制服をきてこちらに通うはずなのにな」 麗々と立つ白い壁に囲まれ校門には警備の者が立つ女学校と茶色いかべに囲まれた小さな学校を見比べた。 しかしこの御者はわかっていない。エルにこの女学校へ通えというほうが可哀想だということを。
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