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先代が亡くなり正式に王の座についてから五年の歳月をかけ、カルティスは国中に目を行き届かせ、国内の整備につとめた。
周りの家臣たちはこの仕事熱心な若き国王を喜ばしく思いながらも、少し真面目すぎる彼に早く身を固めて欲しいと願っていた。
「国は安定し、人々は日々の糧に困ることなく暮らしております。陛下もそろそろ身を固める時期ではございませんか?
同年代の者たちはもう子供が二、三人いてもおかしくはないのですよ。」
そう言われる度にカルティスは小さく微笑んでから、
「まだその時期ではない。」
といい続けた。
そんな彼が突然、花嫁を迎える。と宣言したのが昨年の秋の事だ。
「雪が溶け、新しい命が芽吹き始める頃にやって来るだろう。」
「お相手はどちらの国の姫君で?」
ほとんどの家来たちが倒れんばかりに驚く中、いつも冷静な参謀官、カロフが尋ねた。
「リディア・メル・ロイド。ロイド王国の第二王女だ。」
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