第二章 姫君の行方

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エルの頭の中は珍しいことに真っ白になっていた。 体が弱り辛いときもぐちひとつこぼしたことのない母。毎日会いに行くたびに目を輝かせて喜ぶ母。そのどの姿もうかんではこない。ただ早く会いに行かなければ。そんな思いだけがうずまいている。 途中でサーシャを乗せた馬車とすれ違った。驚いたサーシャが窓から顔を出して何か言っていたが、気にしてはいられない。とにかく飛ぶように馬を走らせ屋敷に転がり込んだ。 「エルディアお嬢様。」 ドアを開けたメイドはぐしゃぐしゃに乱れた髪やハァハァ言っている苦し気な顔に驚いたがすぐにサラの部屋へ入れてくれた。 「お母様!」 エルが飛び込むと部屋にはサラの専属医が来ていて難しい顔をしている。枕元にはサンドラがひざまずいて不安そうだ。
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