第二章 姫君の行方

12/17
前へ
/844ページ
次へ
「おば様、お母様は?」 どうやら眠っているサラの枕元に近づこうとするとサンドラが険しい顔になった。 「なんです、その格好は!すぐに着替えてきなさい。それに今日の分の仕事を終わらせていないでしょう。今すぐ出て行って片付けてきなさい。」 「でも、おば様…」 「ダメよ。今すぐこの部屋から出ていきなさい。聞こえないの?今すぐよ!」 エルがドアの前でぐずぐずしているといきなり後ろから腕を引っ張られた。 「聞こえたでしょ?あなたはここにいちゃいけないの。」 振り向くとサーシャが勝ち誇ったような笑顔を浮かべていて、エルを突き飛ばすと。自分がさっと部屋へ入りバタンとドアを閉めた。 「お母様、ただいま戻りました。サラおば様の具合はいかがですか?」 「ああサーシャ、それが…」 わざとやっているのではないかとエルが腹をたてたことに。肝心のその先の言葉が聞こえない。 うなだれながら階段を降りるエルを気の毒そうにメイドたちが見つめる。 「エルディアさま。サンドラ様がおいいつけになった仕事はほとんど終わらせておきましたので。」 「ありがとう。でもどちらにしても会わせてもらえないよ。夜になったら会いにいくから。ちょっと頭を冷やしてくる。」 エルはいつものくせで両手にバケツを持って泉へ向かった。
/844ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4125人が本棚に入れています
本棚に追加