第二章 姫君の行方

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泉にたどり着くとエルは岸辺に座り込み、自分の膝に顔をうずめた。 「意地悪を言う余裕があるんだから大丈夫。お母様はきっと大丈夫。」 エルは小さく自分に暗示をかけるようにとなえた。 白くすべらかな頬をスッと涙が伝った。そのまま声を殺して泣いていると人の気配を感じた。 「誰かいるの?」 うつむいたまま声をかけると泉の反対側の岸辺に老人が立っていた。 (いつの間にいたんだろう、気付かないなんて。そうとう気が抜けてるな。) 「一体どうしたのですか?お嬢さん。」 エルは恐る恐る顔を上げた。人は自分を見ると大抵男と間違えるのにこの老人がお嬢さんと言ったのがきになったのだ。 老人は綺麗な銀色の髪を後ろへなでつけ、茶色いマントのようなものを羽織っている。
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