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「あなたの声も、なんだか水の流れのように心地よく聞こえます。」
やっと顔を合わせたエルはそう言って微笑んだ。
「おや、それは光栄ですね。ではこの水にその悲しみを打ち明けてはいかがですか?」
エルは不思議な思いで老人を眺めながら口を開いた。
「母の具合が悪いのです。もう何年も前から自分の部屋からは出られない日が続いていたのですが、病状が悪化しているらしくて。」
「らしいとは?あなたはお母様の側にいられないのですか?」
エルは苦し気にうなずくしかなかった。
「母には立派なお医者様がついていらっしゃるし私は側にいても仕方がないですから。」
エルは自分に納得させるようにそういうと立ち上がった。
「ごめんなさい。そろそろ帰らないと…」
しかし倒れた木の上に老人の姿はなかった。あわてて辺りを見回してもやはり誰もいない。
「誰だったんだろう…」
エルは驚きながらも水を汲み屋敷へ戻っていった。
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