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太陽がのぼり辺りに光がみちはじめた時、パン屋の見習いの少年がそれを見つけた。
「旗だ、旗だ。旗が上がったぞ~」
町民たちには花嫁が到着するその日に、城の塔に旗をかかげると伝えてあったのだ。
ニュースは瞬く間に広まり、日が高くのぼる頃には人々は準備万端で城へと続く中央通りの両側に立ち並び今か今かと待ちわびていた。
「カルティスさま、ようやくお着きになられますね。」
きちんとした正装に身をつつみながらも普段通り、書類の山を片付けていく国王を大臣たちも嬉しそうにながめていた。
「ああ、長かったな。でもこれで待ち続けた日々から解放される。」
書類から目を上げようともせずにカルティスは答えた。
「陛下、今日は仕事を切り上げて花嫁を迎える準備の確認に向かわれてはいかがですか?」
「いや、終わらせる。彼女が着いたばかりの時はなるべくそばにいてやりたいからな。」
「ああ、なるほど。」
大臣たちはうなずき合い邪魔にならないようにと部屋を出ていった。
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