第三章 王宮へ

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エルが馬車に乗り込むとサーシャがさっそく小言を言ってきた。 「全く何をしていたのよ!あなたのせいで遅刻したら悔やんでも悔やみきれないわ。」 「ごめんなさい。サーシャ。」 エルはサーシャのドレスのひだかざりに埋まりそうになりながら謝った。サーシャはいつもは男の子のような格好で自分の世話をやいてくれるエルがドレスを着て見違えたのが気に入らないようだ。 (まさか私よりきれいだなんてことないわよね。ええ、あるはずないわ。) きれいな鼻をツンとあげて前を見据えながら自分の馬鹿げた考えを振り払っていた。 「よく似合うわよ。エル」 サンドラの言葉にエルは身震いしそうになった。その声はゾッとするほど冷たく感情のこもらない声だったからだ。サーシャはその言葉を聞きますますツンと冷たい態度になり、エルは居心地の悪い空気の中、もごもごとお礼を言った。
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