第三章 王宮へ

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ベッドから飛び出そうとするサラをカロフは慌てて押し留めた。 「今さら目の前に現れて怒っていますか?」 サラの顔をのぞきこむようにして尋ねるカロフの首にサラは抱きついた。 「生きていらして良かった。本当に良かった。」 カロフは小さく微笑むとサラの髪をなで、痩せ細ったうでをはずして真っ直ぐにその目をみた。 「本当ならばすぐにでもあなたの元へ訪れたかったのですが敵の目をあざむくのに時間がかかってしまいました。しかしあなたが病気だと聞いてから私はずっとこのお屋敷の裏にひろがる森に隠れ、見守っていたのです。」 サラはそれを聞いて悲しそうな表情になった。 「そんなに近くにいてくださったなんて。では私のことを怒っていらっしゃるでしょう?姫君があんなにひどい仕打ちをされているのにどうすることもできずにいたのですから。」 カロフは黙って首をふった。
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