第三章 王宮へ

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ここまで話してからカロフは心配そうにサラを見つめた。 「では、カロフ様は私の命を救うために結婚してくださるのですか?死なせないために?」 サラの震えた声が聞こえてきてカロフは戸惑った。 「あなたにとっては辛いことかもしれない。これは私のワガママなんですから。私は何としてでもあなたを死なせたくない。あなたを失いたくないのです。」 カロフはサラのベッドの横に膝をついた。 「私はたった一人の大切な妹を失い。彼女の夫である親友を失い。息子のように愛情を注いで育てたカルティスも失った。そして今度はただひとりの愛するあなたを失いそうになっている。私はもう失いたくない。一人残されたくはないのです。」 「ではカロフさまは私を愛してくださっているのですね。」 「こんなに年老いた身で恥ずかしいですが…ええ。あなたを愛しています。」 サラがまだ肩を振るわせているのを見てカロフはがっかりした。しかし、サラはもう笑ってはいなかった。彼女は泣いていた。声を押し殺して。 「サラ」 カロフもそれに気付いてうつむいた彼女の顔をのぞきこんだ。
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