第三章 王宮へ

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「証人のサインをここへ」 カロフがそっと顔をエルに向けて言った。その顔が一瞬驚いたように見えたのはエルの気のせいかもしれない。 エルは操られているように紙の前に進み出て、人差し指を軽くナイフの先でつかれてその血を紙に押し付けた。血がつけられた瞬間にその横に名前が浮き上がり始めたがエルが目をこらして見る前に紙は自然に巻き始め、ヒモがきつくしめられた。 「ありがとうございます。」 カロフはその巻物を大切そうに両手にとってエルにお礼を言った。エルは頭に霧がかかっているような状態のまま微笑み返して急いでサラのもとへ行く。 「お母様。大丈夫?」 サラは不思議そうに自分の両手を見下ろしていたが、ゆっくりとうなずいた。 「儀式の直後はひどい疲労感におそわれるんです。特に力を注がれた方が。」 カロフはサラを抱き上げてベッドに寝かせた。
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