第三章 王宮へ

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「もう一つ大切なお願いがあるのです。この証書を届けてほしい人が今夜城に来ているんです。行ってきていただけますか?」 エルは頭がぼんやりしたままうなずいた。カロフはエルを家の外に連れて行くとそこには白地に金の飾りがついた豪華な馬車が停まっていた。 「この馬車を使ってください。ついでに舞踏会も楽しんできたらどうですか?サラはもう大丈夫ですからね。」 微笑んでから、そうそうとポケットから何かを取り出してエルの首にかけてくれた。 「これはお守りです。身に付けていてください。」 エルは首にかけられた美しい宝石に驚いた。糸のように細い銀細工の鎖の先にまだ形を整える前の荒削りなままつけたような青い石がついている。鎖が長く石は外からは見えなくなってしまう。不思議そうにしているエルにカロフは 「これでいいのです。この首飾りは人の目にふれさせるために作られたのではありませんから。」 と言って、庭に咲いていたバラを一輪手にとるとそれをエルの首に巻き付けた。 つけられたとたんに首にあたった感触に驚いて見ると、トゲだらけのツタは金色のリボンに変わり、花は形はそのままで絹で出来ているような飾りに変わっている。
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