第三章 王宮へ

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エルが見守る中、小さな女の子がこちらに背を向けたままそっと部屋にすべりこみ、扉をしめた。 くるりと向き直った女の子は人がいたことに驚いて飛び上がったかと思うと、足がもつれてバタンっと派手に転んだ。 「えっ大丈夫?痛い?」 驚いたエルが近づくと女の子はワッと泣き出した。 「わ~ん、痛い、痛いよ~」 「あ~よしよし。泣かないの。」 エルはポケットを探ってハンカチを出すと女の子の涙をぬぐってあげる。 外から慌ただしい足音が聞こえ、一人の騎士が飛び込んできた。 「誰だ、お前は!」 言うと同時にエルの喉元に剣をつきだした。 エルは素早く剣をのがれ、足をけりだして騎士の手から剣を飛ばした。 「危ないな、この子に当たったらどうするの。」 エルは女の子を抱きしめながら騎士をにらんだ。 「お前…一体何者だ。」 騎士は顔色を失いながら問いかけた。 「シシーの王子様だ。」 抱きしめていた女の子は先程とうってかわってニコニコしながら言った。 「へ?王子様?」 エルが驚いてきくと女の子は嬉しそうに騎士にかけよった。 「ほら、ギル。あの方は私のハンカチを拾ってくださったんだもの。」 騎士はうさんくさそうにハンカチを広げてからエルに向かってふってみせた。
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