第十九章 魔力を持たぬ者たち

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「それで、貴方達は否定もせずにお金でも受け取っているの?」 ルタの言葉に老女は慌てて首を振り、その横にいる女性は悲しい顔になった。 「とんでもない。金品や高価な品は決して受け取りませんし勝手にお供えすることも許可はしていません。 皆、ただ訪れ祈ることで心を軽くしているのです。」 ルタは一瞬顔をゆがめた。 もし、彼らが金を受け取っていたならそれは彼らを憎む新たな材料に、まだ憎み続けることができる正当な理由になる。 だが、そうでないならば… 無表情になるように気を配り、改めて彼らを見渡す。 父や母を襲った当事者たちはもうほとんど死んでいった。その娘、息子は親の罪に縛られながら年を重ねすでに死んだ者もいる。 ルタは小さくため息をつき、持っていた荷物を差し出した。 「これは?」 何とか杖から手を離し女性は荷物を受け取る。 「もう、終わらせようと思って。 土地と家屋の権利書。好きにすればいいわ。」 その言葉に何人かがパッと笑顔を浮かべ信じられないように左右の人間を見回している。 だが、話を交わしていた老女は崩れおちるようにしゃがみ込み支えていた女性も慌てしゃがみ込む。 「ルタ様の御宅はどうなさるのですか?」 一人の男性が一歩進み出て尋ねてきた。 笑顔を浮かべていた者たちも真剣な表情になってこちらを見ている。 ルタは彼らから聴こえてくる声に驚き戸惑いを隠せずにいた。 彼らにとってはこの地で生き、祖父母や親の罪が許されるように祈り暮らすことが信仰のようになっており、毎日交代でルタの家を掃き清め、花を飾り食べ物を用意し、外から祈りに来た人々の対応にあたることは生活の一部になっていた。 その祈りの場が奪われることは自由がない生活よりも深い悲しみにつながるようだ。 (訳がわからない。おかしな人達) ルタは思いつつもどこかで嬉しくなっていた。 「私の家は今のままよ、時々様子を見にくるつもり。あなた方がどこに住もうがどうでもいいけど、私は許した訳じゃない。ってことは忘れない方がいいんじゃない?」 ニヤリと浮かべた笑みは恐ろしく美しく、彼らは慌ててバラバラと頭を下げた。 ルタは身をひるがえして彼らに背を向けケンも黙ったまま後に続いた。
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