第十九章 魔力を持たぬ者たち

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柔らかく美しい色鮮やかな絨毯が敷かれた床に立派なベッドや鏡付きの化粧台まで、およそ天幕の中とは思えない豪華な作りの空間に当然のようにくつろいだ様子で着心地の良さそうなガウンに身を包んだルタが肩肘を付いてソファーにもたれかかっている。 その向かい側に座るジョナスも彼の傍に立つフィルもそんな彼女に驚く様子はなく、ジョナスは笑顔まで浮かべている。 「一時の間ではあるが、彼女は我らに協力してくれるそうだ。」 話し合いが満足いく方向へ決まったのだろう。微笑みを絶やさないまま、ジョナスはそう語った。 「勘違いしないでよ、私にもちょうどいいタイミングなだけだから。」 「協力って、この女が、俺たちに?」 すぐさまつぶやいた。ジョンの頭をケンがはたく。 「不敬だぞ、ジョナス殿下の御前だ。 申し訳ありません、彼は、言葉を心のうちに止めおくことが苦手なのです。」 「構わないよ。正直な人間は好きだ。それに僕の前でそう畏こまらなくていい。」 優しい笑みにジョンも珍しく静かに頭を下げた。 「君たちには引き続き彼女の警護をお願いしたい。いいかな?」 その柔らかな口調で発せられる願いを断わることができる者はいるのだろうか? 至極当然のこと揃って彼らは頭を下げた。 「「お任せください。」」 疑うような目を向ける彼女に面白そうに目を向けてからジョナスは彼らの肩にそっと手を乗せ 「ありがとう、頼んだよ。」 っと言葉をかけルタにも笑顔を向けてからフィルに先導され静かに退出した。
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