第二十章 調整者の苦悩

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ロイド王国の城内はミリア女王の懐妊と元老たちが逮捕されるという大事件に揺れたのが嘘のようにが落ち着きを取り戻していた。 多くの元老たちが裁判にかけられ、 捕らえられたもの、職を解かれたもの、降格されたもの、逆に地位を上げたもの。 様々な処遇が下され新たな体制も着々と築き上げられた。 それは陰でロアンやアンファスが暗躍したおかげもあるが、やはり女王であるミリアの采配が的確であることが大きい。 身重である彼女を気遣って側にはたくさんの家臣がいたが、その誰よりも常に張り付いて側にいるアンファスのことは周りにあまり気づかれていない。 たまに姿を見かけても彼の姿は概ね好意的に皆に受け入れられていた。 「だからといって、こんなにも四六時中側にいなくてもいいのだがな、アンファス。」 身体に負担のかからない椅子に腰掛け、かなり膨らんだ腹部の上に書類を乗せたままミリアが呟く。 「見張っていないとすぐ無茶をする君がいけない。 それにこうして仕事もこなしているじゃないか。側にいれば役にたつだろう?」 彼女のすぐ傍にある机でサラサラとペンを走らせながらアンファスが笑う。 「まぁ、助かりはするが…」 何も気にしていなさそうなアンファスが面白くないのかミリアが不満そうにした時、執務室の扉に控えめなノックが響く。   返事をするとすぐに扉が開き、侍女が治療師の来訪を伝える。 許可を出すとすぐにコツコツと杖をつく音が近づいてきて城に似合わぬ慎ましい服装の女性が二人入ってくる。 「先生、ルー嬢。ようこそ。」 微笑むミリアと対照的にアンファスは物陰から顔をしかめている。 (こういう事があるから尚更一人にはしておけない。) アンファスの不満はルーにだけ通じたが、彼女は何一つ聞こえていないようにツンとしたままだった。
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