第二十章 調整者の苦悩

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男2人は外へ放置したまま、私とデウス元老はミリア女王の元へ向かう。 部屋は人の熱気と慌ただしさに満ちていて、先生は女王の隣に居て身体をさすっている。 「来たね、ルー良かった。」 笑顔で迎える先生の反対側にアンファス・ドリューが居て握りしめるようにミリア女王の手を握り痛みを和らげる魔法を使っているようだ。 「なんでこんなにも関係ない人間がたくさん室内にいるんですか?」 室内には医療関係者ではなさそうな貴族の女性たちが何人かいて、遠巻きに女王を見守っている。 ツンとして何も答えない彼女たちに代わって近くにいた王宮の医師の1人が教えてくれる。 「女王陛下の出産に際して、陛下のお体から生まれたことをその目でしっかりと確認する栄誉を賜った高位貴族の方々だ。」 (お貴族様ってホントに大変…) 呆れながら、彼女に目をやると、滝のような汗をかいて、苦しそうにうめいている。 侍女が必死に汗を拭っているけれど… 「室内の空気が悪すぎます。」 人前でやるのは嫌だったけれど、私は持ってきた荷物から短い杖を取り出し、魔方陣を書き始める。 「勝手な真似を!」 王宮側の人間だろう、数人に取り囲まれるが手を止めずに書き進める。 彼らが手を出してこないのは扉の側で黙ってにらみつけるようにこちらを見ているデウス元老と面白がるように見ているロアンのおかげだろう。 たいして難しい陣ではない。書き終えて詠唱を唱えればすぐに室内の空気が一変する。 文句言っていた人間たちも、息苦しさや居心地の悪さが軽減して何も言わなくなった。 「もう頭が見えてきてもおかしくないんだけどね。」 先生が腰をさすってやりながら呟いているけれど、何かがおかしい。 ミリア女王の顔色も悪いし、彼女のものではないひどく嫌がる声が聞こえてくる。 それが何か気づいた時、私はアンファス・ドリューに突っかかるように声を上げていた。 「彼女に魔法を使うのをやめなさい。今すぐ。」
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