35人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
『……作戦内容は以上です』
Gジェルで一杯のコクピットに、女性オペレーター《フィオナ》の、ややたどたどしい声が届く。
その中に、分厚いパイロットスーツを纏い、メットから束ねられたコードを弁髪のように伸ばす者が居た。
それはシートに括り付けられ、あたかもパーツの一つであるかのようにそこに座っている。
『状況は既に出来上がっている。後は君次第だ。よろしく頼む』
続けて男性のものと思われる低い声が届く。
衰退したコロニー《アナトリア》の新たな指導者のものだ。
『ネクストを使った、初めての実戦よ。……頑張って』
輸送機のハッチがゆっくりと開いていく中、フィオナの心配そうな声が続けて響いた。
パイロットは、ネクスト特有のシステム《AMS》から来る負荷に頭をかき回されながらも、口を開いてはっきりした声を出した。
「心配することはにい。俺が無事帰還するるのは確定的に明らか」
《彼》は、その独特の口調で返事をした。
その平生とさして変わらぬ態度に、フィオナの顔が僅かに綻んだ。
『……そうね、《ブロント》』
彼女はその名を呼ぶと、ハッチの開放を行った。
輸送機の底部が開き、騎士のようなデザインが特徴のオーギル・タイプのネクスト《グラットン》がその姿を露わにした。
格調高ささえ感じさせる白き装甲が、カーゴ内の光を反射し輝いていた。
『グラットン、投下』
フィオナの声と共に、アームが解き放たれ、グラットンは眼下の都市に向け降下した。
グリフォンには、既にテロ勢力の部隊が展開している。
これの排除が、彼の任務であり、アナトリアの送るプレゼンテーションだった。
『……PAは展開出来ません。気をつけて……』
「……おいィ?」
突然のフィオナからの通信に、ブロントは怪訝そうな声を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!