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『都市への汚染を防ぐ為とのことだ。厳しいだろうが、頼むぞ』
彼のその言葉に対し、エミールは淡々と付け加え、通信を切った。
「お前後でボコるわ…」
ブロントは愚痴ると、グラットンのメインブースターを吹かし、大地へと軟着陸させた。
その二本の脚が大地を力強く踏みしめ、メインカメラが強く敵部隊を睨む。
「行くます!」
ブロントは叫ぶと、グラットンを前方へとダッシュさせた。
既に展開していた戦車・MT部隊はこれに反応し、その火線を集中させる。
幾多の火砲が唸りを上げ、強烈な運動エネルギーを伴う弾丸の嵐をグラットンへと横殴りに吹き荒れさせた。
だがグラットンはブースターの出力を上げ、地面から離れると、そのライフルを敵戦力に向けた。
瞬時にそのトリガーが引き絞られ、通常兵器を優に凌ぐ破壊力を持った熱弾は戦車を容易く貫き、玩具の如く跳ね飛ばした。
「流石にネクスト用火器は格が違った」
ブロントは、初めて実戦で使うその武器の威力に関心しつつ、散布型ミサイルを展開し放った。
小型、しかし32発同時に撃ち出されるミサイル群はMTに襲い掛かると、あっさりと爆散させた。
それを確認すると、ブロントはグラットンをビル街から抜けさせ、大川へと移動させた。
『敵ノーマル、六機……多すぎる……!』
フィオナは驚愕した様子で言った。
幾らネクストとはいえ、PAが無ければ防御能力に不安が残る。
加えて、ブロントはこれがネクスト戦における初陣であり、ますます危険性は高くなっていたのだ。
「汚いなさすがテロリストきたない」
一方、ブロントは苦々しげに言い、水上を渡ってノーマルへと近付いて行った。
「水素吸合金属の塊で出来たネクストが標準装備のノーマルに遅れをとる筈はない」
ブロントは言い放ち、アルドラ製の重装ノーマルに向けミサイルを放った。
微妙なカーブを描きつつ目標へと猛進するそれらは、ノーマルに命中すると次々に爆発を起こし、過剰な衝撃と黒煙で覆った。
そこへ、彼はライフルによる追撃をかける。
熱弾が疲弊した装甲を貫き、ジェネレータまで達し爆発させる。
『一機撃破。その調子です』
フィオナは、若干トーンの上がった声で通信を送る。
と同時に、グラットンを一条の熱線が襲った。
アルドラの提携企業、メリエス自慢のレーザーが、純白の装甲を黒く焦がした。
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