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『目標はトレーラーにて移送中です。速やかに接敵、破壊して下さい』
荒れ野と化した旧市街地を駆けるグラットンに、フィオナからの通信が届いた。
この時、ブロントとグラットンの目標は、言わずと知れたマグリブの英雄『アマジーグ』の『バルバロイ』だった。リンクスとしての経験が浅いブロントには、明らかに荷が重い相手である。
そこで立案されたのが、移動中を強襲し、まともに動けぬ内に畳み掛けるという作戦だった。
そのために、グラットンの武装はレーザーライフルに散布型ミサイルと、攻撃力重視のものをチョイスしている。
多少『汚い』作戦ではあるが、アナトリア……ひいてはフィオナの為には止むを得ないと、彼は了承したのだった。
「俺は傭兵だからよ闇討ちもするし奇襲も辞さない(遺憾)恥知らずな真似はしたくなかったんですがねえ…?」
彼はブースターを吹かしつつ、自らを納得させるように呟いた。
とはいえ、最後の疑問が誰に向けられているのか分からないあたり、彼の困惑ぶりが表れていると言えよう。
フィオナは何処かいたたまれない物を感じつつも、グラットンの誘導を続けた。
だが、ここで想定外の事態が起きていた。
グラットンの視界に納まったバルバロイ……それは既に起動しており、トレーラーから悠然と飛び立ったのだ。
『バルバロイ、起動している……!?』
「おいィ?」
ブロントは驚愕しながらも、散布型ミサイルを起こし、バルバロイに向け放った。
夕焼けをバックに飛行するバルバロイは、群団となって迫るそれらを、容易く引き付けて回避した。その動きには手慣れた物があり、彼の戦闘力の片鱗を窺わせた。
『奇襲か。無駄な策だったな』
アマジーグは嘲るように言い、ショットガンとアサルトライフルをグラットンへ向ける。
その二門の火器から弾丸が吐き出され、グラットンは横にQBしてそれらを避ける。捌ききれなかった数発が、グラットンの装甲を抉った。
「無駄かどうかは戦わないと分からにいと言っているサル」
ブロントは機体を持ち直させると、アマジーグへと返答し、グラットンの右腕に電力を供給させた。
「レーザーで焼かれたいか?」
その言葉と共に、空間を超高温のレーザーが走った。
それは光学兵器に対し脆い、バルバロイの装甲を焼く。アマジーグの脳を、痛覚が襲った。
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