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辺りは薄暗く帳が降りて、それに抗うようにこうこうと照るコンビニエンスストアの照明を車内で受けながら、戒は浮かない顔をしていた。
洩れるのは溜め息ばかり。
ふとまた慌ただしく携帯の着信が鳴って、力なく電話器を開いた。
『応、今大丈夫か?』
「葵くん…」
発信元は葵だった。
「どうしたの?…」
『お前、怯えてたろ。大丈夫かと思って…』
「え…」
葵に見られていたことに、戒はぐっと息を呑んだ。
『なんか…あったん?』
「――ぅうん、大丈夫…だから」
『嘘ならもっとマシな吐き方しろよな』
「………っ」
心配してくれる葵の気持ちは嬉しい。
でも、今全てを話す訳にはいかない。
知られてはならない。
『――無理には訊かねぇよ』
(葵くん……)
『言えねぇんだろ。訊かねぇ。だから、黙んなって…』
「ごめん…」
『なんかできることあったら言えよっ。』
「…ありがとう」
そう伝えてパワーキーを押すと、ふと逆光に影が落ちた。
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