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言い終わらない内に、その指はぐっ!と戒の喉笛を締めあげた。
詰まったようにむせる戒。
「おっかしいなぁ。どうしてれいたなんかに脇見してんのかなぁ?」
(違うよ、麗!)
抗いたいが、声が出ない。
「ねぇ、戒は俺のこと好き?」
とろけそうな笑みで小首を傾げて、麗が問うた。
答えられない戒は精一杯頷く。
「…上出来だよ、戒」
やっと解放されてむせ返る戒に優しく唇を重ねて、麗は彼の頬をそっと撫でた。
「――それじゃ、行くよ」
気をつけてね。と言い残して、麗は車を降りた。
ばたん、という重たくて乾いた音だけが夕闇に消える。
「あ、それから」
車内で惚けている戒。
「これだけは覚えといて」
背中を向けたまま、麗の口元が不気味に吊り上がった。
「裏切ったりしたら、殺しちゃうから」
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