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「俺、行かないよ?」
―ぞくっとした。
麗は自分のずっと前を歩いているのに
声色に隠れた無言の手錠
彼は決してこちらを見てはいないのに
有無を言わせないプレッシャーが、戒を締め上げていく。
「………ごめん、僕も行けない」
そう言うしかなかった。
「そんなぁっ;みんなで行くべぇ」
「ごめん。別件で用事あんだ」
即座、至極残念そうにして麗は一刀両断。
「僕も電機屋さんにエアコンの修理頼んでて…」
玲汰の顔が不安そうに陰るのがわかった。
(ほんとは、ついてってあげたいんだけど…ごめん;)
せめてそう耳打ちしてやる事しかできない戒。
「じゃ俺らだけでいくか」
流鬼がいつものいたずらっぽい笑顔で玲汰の頭をどつくと「俺が、車出すべ」と苦笑いして玲汰は先頭切って小走りに駐車場へ。
流鬼もトコトコ小走りで付いていく。
なんでこうなっちまうんだょお。と葵はうなだれながら二人に「バイバイ」と手を振った。
「―――――――」
背中で睨み付ける麗と、俯いて動けないでいる戒だけが残る。
「戒」
やっと手錠が解かれたように、戒は恐る恐る後ろから麗を抱き締めた。
「―正解」
麗の口元が歪んだ。
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