壁が見た風景

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 薄暗い夜空の中、街灯が辺りを優しい光で照らし出す。向かいの店のショウウインドウに寂しくもぼんやりとゴッホの絵が浮かび上がっていた。  我が輩が見る景色はいつも同じ。疲れきったサラリーマン。手を繋いで歩く若いカップル。時々思い出したように通る車。そして、向かいの絵画店。  何時からだろう。ただ飽きることなくただひたすらに同じ景色を見続けている。昼と言わず夜と言わず、そこにはただうら寂しいアスファルトで固めた道路が横たわっていた。  一日に起きることと言えば向かいの絵画店に人が入るか否か。ある時はいくつもの筆が、まるでススキのようにひょっこり顔を出した紙袋を抱えた人が出ていく。またある時はなんとも重そうな額縁を抱えてほくほくの笑顔で出ていく人もいる。  だがそれは本当に稀なもの。大半の月日を絵画達は人が流れていくだけの道をただ見据えるだけだった。
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