第一章

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目の前光景は、地面にぽっかりと空いた大きな穴と女の子。 穴は広くて、いっぺんに5人くらい飛び込んでも全然余裕だろうな。飛び込む気なんて更々ないけども。 女の子の方は、大きな穴よりももっと不思議だ。まず格好、細身の燕尾服みたい。彼女が細身なこともあるのだろうが、ピシッと着こなしている。黒髪を高い位置で一つに結っていて、頭には小さなシルクハットがちょこんと乗っていた。 そこまでは何とか理解できる。が、彼女の頭の上に、とんでもなく不思議なものが乗っている。長くて白くて、たまにぴょこっと揺れるそれは、強いて言うなればうさぎの耳。 頭の小さいシルクハットを挟むようにして〝生えて〟いる。 こんな変テコリンな格好の女の子に縦穴背景に、 「こんにちはアリス!」 とか言われたら、誰だって目が点になるよね。 「こっ……こんにちは!」 なんとか絞り出せた言葉が、これだ。確かに私は有栖さん。 「私はピーターと申します」 自己紹介されちった。ピーターちゃんか。外国の人だろうか。 「貴女はめでたく、今回のアリスに選ばれました。実に残念です」 めでたく残念なんだ。え、つまりプラマイゼロ?
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