糞壺

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「……着いたぜ。ここが今日から、お前の家だ。」 運転手の声に、私は周りを見回した。 車は其処だけ昭和にタイムスリップでもしたような、傾きかかった木造アパートの前に停められた。 住宅街で有りながら、灯りのついた家も無く、アパートの前に立つ電柱に付けられた電灯の明かりがより一層、アパートの見窄らしさを際立たせている。 「ボーっとするなっ!!チャッチャと降りろ。」 運転手の男が怒鳴る声に諭され私は車を降りた。 私を降ろすと、あっという間に車は何処かへ走り去った。 アパートの入口には腐りかけたベニヤ板に[東日本通商取引株式会社寮]と僅かに読み取れる。 ……ここから私は始まった。
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