糞壺

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かんぬきの壊れた門を入ると人影が見えた。 私に気づき寄ってくる。 切れ長の目に独特のエラが張った男…… 「おうっ!!お前が今日からココに入る……えぇ~と……」 男は距離に対して不必要な程の大きな声で話し掛けて来た。 『……山岡です』 「おうっ!!そうそう、山岡君ね。ワシはココの班長の坂入だ。宜しくなっ」 と言うが先か無遠慮に私の手を握り締めた。 ―……ウザらったい。 どうやら坂入の話から推測すると寮はココ以外にも在り各数人が寝泊まりし、寮を仕切る者を班長と呼ぶらしい。 坂入に案内され玄関を入ると運動部の部室のような、すえた匂いが鼻についた。 玄関の前は四畳半の部屋で、つき当たりに二階につづく階段が見える。 「廊下の先が台所で」 坂入が顎でしゃくった先には、黒ずんだ年季を感じさせる卓袱台が覗いた。 「食事は各自、そこから持って来て勝手にやるんだ」 坂入は淡々と説明する。毎度同じ話をしてるのだろう…… 『それで、寝るのは……』 「2階だ……それにしても自分、覇気が無いのぉ?そんなんじゃウチやってけんぞ。」 と、まるで大声こそ最高の自己表現と言わんばかりに坂入は言う。 ―やはりウザらったい…… 『はい。分かりました!!』 この手の奴は素直に応じるに限る。 私が声を張ると、やはり坂入は満足気に 「そうだ、やりゃ出来るじゃないか」 と私の背を叩く。 『で、他の社員の方は、まだ帰って無いんですか。』 「まだ8時だ、誰も帰ってる訳無いだろ……」 何を言ってるんだ!?と言わんばかりに少し小馬鹿にしたように坂入が続ける。 「だいたい皆、11時,12時位だ。」 ニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべ私を見る坂入を受け流し、2階へ向かう。
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