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ある鏡職人が王妃の元へと品物を献上に現れた。
「美しい王妃様!本日私が持って参りましたのは魔法の鏡にございます!」
「魔法の鏡ですって?普通の鏡にしか見えないわ」
「いいえ、確かに魔法の鏡でございます。この鏡は問い掛けに対して真実を教えてくれるのです。例えば『この世で一番美しいのは誰か』と問えば、王妃様だと答えることでしょう!」
「あ、あらそうなの?それは素晴らしいじゃない!でも、もし違う答えが返って来たら、どうなるか分かってるでしょうね?……そっ、それでこの鏡はどのようにして使うのかしらっ?」
「はい、まず大切なのは周囲に誰も居ないことを確認することです。続いて、そこに映る自身の顔をしっかりと見詰めながら、ある『呪文』を幾度か唱えるのです。そうする事で魔法の鏡を呼び起こすのです」
その晩、早速王妃は魔法の鏡を試すべく、一人部屋で鏡に向かい、職人に教えられた方法を試みた。
鏡職人の教えた呪文は、次の通り。それを鏡の向こうの自分に繰り返し唱える。
『お前は、誰だ?』
翌朝見付かった彼女は、自我が崩壊し、気が狂い、蒼白な顔をして、まるで死人のような状態だった。
その完全に血の気が引いた顔色は、まるで雪のような白さだったと言う――――
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