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僕は放課後のグラウンドにいた。クラスの数人の仲間でサッカーをしていた。
人間の頃サッカーは得意だった。夢の中とはいえ僕は充実していた。だって思いっきり走れるし、楽しかった。
家に帰ればお母さんに甘えられる。「イチタロウ」としてじゃダメなんだ。
どうしたらいいのだろう?夢と現実が逆転しないだろうか…
そんなことを考えながら、僕はサッカーボールを蹴ながらゴールに向かって走っていた。ゴールキーパーはいない。
ただ仲間で敵も味方も関係なくふざけていたんだ。
僕はゴールを決めた。そのゴールうしろのフェンス越しにイチタロウがいた。こっちを見ている。
遊んでほしい。
…というわけでもなさそうだ。僕はそう感じた。
僕はフェンス越しにいるイチタロウに向かって歩いていた。その間もずっと、僕たちは目が会ったままだ。
イチタロウはきちんとお座りし、僕の到着を待っていた。僕はイチタロウの目の高さに視線をあわせ、フェンスを挿みしゃがんだ。
『…イチなの?』
僕は言った。
真っ黒で艶のあるイチタロウの目が、まっすぐ僕をみている。
そして、小さくコクッと頷いた。
…どういうことなのだろうか?夢の中で、ふたりは入れ替わっている。
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