0人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
『ねぇ!』
少年が僕に叫んだ。そして続けて言う。
『僕の家においで!?』
僕は足を止めた。
もう日が暮れる。公園に着いたときには沢山あった暖かいオレンジ色の空が、どこかへ行っていた。宛てもなく歩き続けて疲れていたし、何よりもお腹が空いていた。食事に有り付けるんじゃないかと思いOKした。
…と言っても
うん!行くよ!
と答えたわけではない。
それを言う代わりに、シッポを振ったのだ。
そんな僕の様子をみて、少年は微笑んだ。そして、そっと近付き優しく僕の目を見つめながら、頭や背中を何度も撫でた。
その手も、目と同じように優しかった。
少年は僕を抱え込むような体勢になり、背中に頬を当てた。
抱え込まれた僕は、少年の腕の中に収まったが、もしも僕が2本足で立ったなら背丈は同じぐらいだと思った。
僕の毛並みの色と少年の髪色が似ていることに気付いた。…お互いの毛の境目が分からなくなった。
真っ黒でもなく、真っ茶でもない中間色。そしてサラサラで柔らかだ。
僕は少年が気に入った。
少年も僕に好意を持ってくれていると思った。
最初のコメントを投稿しよう!