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「人を傷つけるのと殺すのは違います。それを同じにしてしまったら、みんな殺人鬼ですよ」
黒い瞳で英介は、男の瞳を見つめる。
「まあ……言いたい事は何となく分からない事もないけれど。それでも、人を傷つける時点で“鬼”かもしれない」
男は少し考えながら、英介に自分の考えを話す。
これが最近の、いや、ここ2年弱の彼らの日常だ。
「やっぱり甘いですね、佐伯さんは」
「まあ、それが俺と英介君の違いだ。理解しているよ」
佐伯さん――佐伯 景太郎は、英介が新聞を畳むのを見ながら、邪魔しないタイミングで彼の頭を優しく撫でる。
「本当にどうだか……」
新聞を畳み終わっても、英介は佐伯の頭撫でが終わるまでじっとしていた。染めたであろう黒い髪の隙間から、何本か白い髪が覗く。
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