ファイル #1 プロローグ

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嫌な予感、的中……。 「それで明美、怖くなって逃げて来ちゃって……もう嫌! 学校行きたくない……!!」 悲鳴にも似た明美の声が、部屋中に響いた。 錯乱する明美をギュッと抱きしめ、佐伯は愛娘をなだめる。それをカギに、明美はまた涙を溢れさせた。嫌な顔一つせず、悲しげに佐伯は明美を見ていた。 「学校で自殺……ですかね」 英介は首を捻って考える。 「でも、そうは思えないな……。紗耶香ちゃんは大人しい子だったけれど、明美と凄く仲が良くてお互いに相談しあったりしていたのに」 明美を見つめたまま、佐伯は言う。彼は何度か紗耶香ちゃんに会ったことがあるらしく、自分が見た彼女の印象を英介に伝えた。 「ふぅん……でも、その話を聞く限りだと、恨まれる事も無さそうですね」 「恨まれ……ること?」 明美は泣きながら「そんなこと無いもん」と発言を付け加えた。 「なるほどね」 小さく呟き、英介はテーブルから降りる。そして薄汚れた青い帽子を被って身形を整える。 「どこに行く気だい?」 佐伯が尋ねる。
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