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「う、嘘!? 何で? 紗耶香ちゃん、どこに消えちゃったの!?」
机にぶつかりながら、慌てふためいて明美は前進する。
「明美、本当にここなんだね?」
キョロキョロと辺りを見渡す明美に、佐伯は問う。すぐに頷くという行為で明美は肯定を示した。
「まさか、死体が動いてどこかに……」
佐伯はまるでホラー映画のような光景を頭に思い浮かべ、ぞっとする。
「え? えっ?」
明美も父親と同じことを想像したのか、余計に慌てふためく。
「いえ、そうではないようですよ。佐伯さん」
そんな2人を背に、英介は綺麗に机を避けながらツカツカと部屋の真ん中まで来て天井を見上げた。
天井には上の階を支える為に何本もの木の棒が張り巡らされている。その一本に僅か数センチの、何かがこすれたような跡があることに彼は気づいた。
「英介君? どうしたんだい?」
机の上に登って背伸びを何度もし続ける英介に疑問を抱き、佐伯は近づく。ガタガタと机にぶつかりながら、彼はふと思う。
この部屋、もう使われていないとはいえやけに机が多いな……と。
佐伯が近づいて来たのを見、英介は困っているように無表情で首を傾げた。
「佐伯さん。代わりにこの棒、見て下さい」
まだ160cmあるかないかの英介の身長では、机に乗っても天井には届かなかった……。
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