始まり

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県内某所、某年12月25日。 自分が吐く白い息を見つめ、白髪の少年は牢の外にいる見張りに尋ねた。 「警察さん、警察さん、今日は何月何日ですか」 びくり、と一瞬体を強張らせた牢の外の人間は、なるべく無機質に牢の中の罪人に告げた。 「今日か? 12月……25日だ」 それを聞いて罪人はにこりと笑う。 「ああ、そうですか。ありがとうございます」 あまりにも綺麗な罪人の笑みに彼は戸惑った様子で前を向いた。 (「いくら何犯も罪を犯しているとはいえ、娘と同じくらいの年じゃないか。なぜ少年院でなくウチにいるんだろう」) 罪人をチラリと見ながら、牢の外の彼は思った。 雪のように真っ白な、癖のある髪を持つ少年……そのどこか現実離れした外見は、少し不気味にさえ思える。 「警察さん」 ふと、また牢の中の罪人が話しかける。 頼むからあまり話しかけないでくれ、と心の中で願いながら、彼は罪人に「何か?」と尋ねた。
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