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「警察さんにとって、12月25日は何の為にありますか?」
何かと思えば、思っても見なかった質問。彼は非常識な者に教えるように、当たり前の事を言った。
「12月25日と言えば、クリスマスだろう。恋人同士なら恋人の、家族がいるなら家族の為にあるのではないか?」
それを聞いた罪人は、牢の中でくすりと笑った。
「何が可笑しいんだ?」
罪人の控えめな笑い声は少し彼のカンに障ったようだ。ジロリと不機嫌そうな感情が罪人の方にむけられる。
瞬間、彼はギョッとした。いつの間にか罪人の小さな手には人間の髪の毛が握られていたのだ。
罪人である15歳の少年は感情の無いような黒い瞳の奥に、驚いている警察官を捉えた。そしてニタリ、とあくまで優しく笑う。
「警察さん、貴方は極普通の一般人だ。運悪く殉職する事はあっても、恨まれる事はないでしょう」
淡々と、ただただ淡々と、罪人は彼の瞳を捉えて語り続ける。
その瞳には、全てを捕らえて放さないような何かが宿っていた。
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