始まり

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「こ、これは宮下警部!」 「佐伯、コイツの鍵を」 宮下と呼ばれた男は、先程から罪人と話しをしていた彼――佐伯に牢の鍵を渡すようにと手を出した。 佐伯から宮下へ、牢屋の鍵が渡される。 「ああ、いい所だったのに」 子供らしい口調でクスクスと笑いながら、牢の中の罪人は立ち上がった。 首にぶら下がっている袋の中から、先程罪人である彼が握っていた髪の毛のような物が出ているのを佐伯は見た。ゾッとして目を逸らす。 牢屋の扉が開かれ、罪人が出て来る。 数歩歩いた所で彼は立ち止まり、佐伯に聞こえる大きさの声でこう囁いた。 「一種の心理トリックのような物ですよ。貴方は実に正直者な顔をしていましたから」 ふっと、何と言っていいのか分からない感情が佐伯の中に流れた。 「おい、釈放されたくないのか? さっさと来い」 宮下が痺れを切らしたかのように、罪人である彼に声をかける。どうやら短気な性格のようだ。 「はい」と言って罪人が佐伯の前を過ぎていく。 その間際、罪人は佐伯に何か囁いて言った。
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