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私は頑張って助手席に座った。日本車なので、右側が運転席、左側が助手席である。
途中落ちそうになったけど、運転席のチャックに引き上げてもらった。席から見渡す目線はまるで二階建てのバスくらいの高さである。死角だらけで前方も全開の鉄扉の上しか見えない。
そしてドアを閉め、チャックは右手でキーを回してエンジンをかける。
トラックかバスのようなディーゼル車独特のエンジン音が響き渡る。
私も車の免許は持っていることは持っているけど、こんな車は運転出来ない。眺めはいいけど、ちょっと恐い…。
チャックはヘッドライトと、更にフロントバンパー2つと、荷台に付いているロールバーの3つの補助ランプを点灯させ、左手でシフトレバーを1速に入れて徐行して発進させた。
タイヤが転がり出した時にゴゴゴという大きなタイヤのゴツゴツした溝が地面に接地する音がする。そして車は格納庫を抜けて、ゆっくりと牧場の敷地を走らせた。大きなタイヤは砂利道の段差の影響を受けやすいらしく、段差の度に車がバウンドする。バウンドの度に私は声を出してしまう。
「キャ‼」
私は正直恐い。助手席の窓から闇の中地面を転がる大きなタイヤを見下ろす。グラップはそのバウンドにテンションを上げ、奇声を上げる。
「フォウ‼‼最高だせ‼」
ハルも一緒になって車のバウンドにテンションが上がる。
「アハハハハハ‼この揺れ最高‼」
チャックは楽しそうな表情をしている。運転する人が一番怖がりそうなのに楽しそうに笑っている。見かけに寄らずワイルド…。
私は不安になって運転席のチャックに聞いた。
「ねぇ…タイヤが勝手に外れて転がって行ったりしないわよね?」
そう思ってしまう程に異形な車なのでつい言ってしまった。
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