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チャックは笑いながら左手でシフトレバーを2速に入れながら答えた。
「大丈夫だよ。心配ないから」
運転するとちょっと雰囲気が変わるチャック…。まぁ、ちょっとかっこいいかも…。
モンスター車がバウンドしながら敷地を走る姿に牛達も興奮して、柵の中を走り回っている。まるで一緒にテンションが上がっているかのよう…。
そして車は牧場から路上に出る。突き当たりを右折して直線の牧草地帯の見通しの良い道路を走らせた。スピードが上がる度にタイヤの音は激しくなる。
1台車とすれ違ったが、この車から見る他の車は何とも小さい。逆に闇の中でこんな沢山のライトを点灯させて走るモンスター車とすれ違ったらどう思うだろうか。私は間違いなくあんぐりとしてしまうだろう。
ハルが言ったように窓から入り込む夜風が気持ち良い…。田舎だから尚更かな…。空には明るい満月が昇っていて、月の周りを囲む雲が月明かりに照らされてとても幻想的…。
ハルは隣のグラップに振り向き言った。
「ねぇ?何か音楽でもかけましょうよ」
グラップは後部座席から前にのり出し、運転席と助手席の間にあるラジカセをイジる。
「そうだな…ちょっと待ってろ。スピーカーはまだ完成してねぇが、それなりの音は出るはずだぜ」
そして、スピーカーから音楽と共に激しい男の歌声が流れる。
「俺は‼‼ファンキー‼‼ゾンビ‼‼イエー‼‼‼‼‼」
いきなりのスピーカーからの咆哮に私はビクッとなった。
この狂ったような歌声は、死人みたいなハードロックバンドの“ベルゼベブ”だ。
私は興味ない…。煩いだけでこのバンドの何処がいいのかわからない…。
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