月夜のドライブ🌃

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せっかくの雰囲気が台無し…。私はムスッとしていた。そんな心境をハルも思っていたみたいで、彼女も言ってくれた。   「ちょっと‼もっと何か無いの?」   グラップは前に乗り出して、舌打ちしながらラジカセをイジる。   「チッ…何でもいいじゃねぇかよ。…じゃあ、俺様の“彼女”でどうだ?」   彼女?まぁ、グラップの妄想に間違いない。彼は根っからのリリーナファンらしい。面白いことにその部分は誰も突っ込まない。   次に流れて来たのはリリーナの美しい静かな歌声。   「夜が明け…朝日が昇る…。ああ、何故朝何か来てしまうの…永遠に夜だったらいいのに…」   この曲も好き。リリーナの“永遠の三日月”だ。彼女の明るい歌も好きだけど、こんな哀愁漂う儚い歌もいいな…。皆しばらく黙って曲を聴き入っていた。   そして永遠の三日月が終わり、更にリリーナの別曲が続く。何だか気分が良くなって来た。   私はテンション上げて皆に聞いた。   「ねぇ、どっか行き先決めよ?」   すると「待ってました」とでも言わんばかりに、グラップは自分の膝をパンッと叩き笑顔で言った。   「俺行ってみてぇ所があんだよ。ロマンチックな場所だぜ」   隣に座っている。ハルがはしゃぐ。   「何何⁉何処⁉」
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