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城の姿がわかる、ちょっと離れた所で車を止めた。私達は車からハシゴを下るように降りた。4つのドアをそれぞれバタンと音を立てて閉めると、直ぐ目の前に夜空に向かってそびえる要塞のような禍々しい城を見上げた。
ルーマニアに限らず、ヨーロッパには沢山の古城が残っている。そのほとんどは廃墟のまま残っていて、中には文化遺産として観光名所にもなっている。かの有名なドラキュラ公が住んでいたというブラン城もその一つ。だけど、この城は文化遺産のように公にされていない廃城…。城の周りの生い茂った雑草等を見ても誰かが手入れしてるような城ではない。おそらくかなりの月日人目につかず放置されてきた城なのだろう。言い方は変だけど、ブラン城よりドラキュラが住んでいそうな雰囲気の城である。ドラキュラというより悪魔かな?
とにかく怖い…私はハルの腕を引っ張る。
「ねぇハル…何だか気味悪いわ。引き返そうよ」
ハルは目の前の廃城に目を輝かせワクワクしている。
「すっご~い‼こんな所にこんな城が残ってるなんて‼」
ハルは私の話を聞いていない。グラップは城をシゲシゲ見て言った。
「すげーなコレは…大体の城は何処かのモノ好きの金持ちが別荘にしちまってるか、観光地になっているのに。こうして人知れず残っている城は珍しいぜ」
ハルはグラップに聞いた。
「以前展望台に行った時には気がつかなかったの?」
グラップは頭をかいた。
「いや…気がつかなかったというより道を間違えたようだな。ここは展望台の場所とは違うみてぇだ」
全く…何て間違いをしてくれたのか…。
私はチラリと城を見つめた。闇に浮かぶ不気味な城にゾクッとする。幽霊が絶対に出そう。
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