ため息…

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大きくため息をつきながら広い大学のキャンパスを歩いて行く。今履いているお気に入りの水色のロングスカートをなびかせて…。   はじめまして。私はラピスと言います。   見ての通り髪は長くもなく短くもなく綺麗でもない半端な髪型、身長も低め、スタイルだって自慢出来ない…普通の女の子です。   今日の講義はもう終わりです。夕方だし、もう帰るだけなんだけど、何か落ち着かなくてキャンパス内をウロウロしています…。   ルーマニアの中心からやや北東に位置するトランシルバニア州、“シギョショアラ”…あの有名な吸血鬼、ヴラド・シェペシ、ドラキュラ公が住んでいたとされるブラン城を始め、レトロ風の時計塔等、中世の雰囲気を色濃く残した街。 私はその街中に存在する唯一の大学、“パラサイト大学”という怪しげな大学の人間心理学を専攻している21歳です。   キャンパスもやはりトランシルバニアを思わせる中世風のデザイン…流石は吸血鬼伝説等、数々の都市伝説が存在するルーマニアだ。創立100年らしい…今が2009年だから…1909年設立だね。まぁどうでもいいけど。   私はその怪しい大学まで徒歩で行ける程の近くに一人暮らしをしています。だって、家から通ってたら門限がどうとか、親が煩そうだし…でも卒業するまでは親の世話になりっぱなしだね。   でも、その怠けたキャンパス生活も今年で最後……嫌だなぁ…元々私は別に凄く勉強がしたかったわけではない。人間心理学って言ってもピンと来ないし、興味はない。ただ社会人になりたくなくて、遊んでいたいから大学生になっただけ。   でも、もう遊んでいられるのも最後かな…就職活動に、卒業論文…。またため息が出る。   「うう…嫌だ…」   遊ぶつもりで大学に行ったのにこの3年間何してたんだっけ?何か知らない内に時間ばかりが進んで…恋愛だってしてないし…、というか、この大学つまんない男しかいないし…。   私は色々考えながら、キャンパスの中庭を歩いている。そこの大きな樹齢1000年と言われている大木の下で、男一人女一人で楽しそうに会話している姿を目撃した。私は立ち止まり、会話している男女を遠目で見つめた。   うん、友達は出来たよ。親友も…。ほら、彼処の大木の下で楽しそうに話している女の子…。男の子のほうは知らないけど、女の子のほうは私の親友。私は親友を遠目で見つめながらため息が出る。  
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