親友。

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そうだった、そうだった。グラップの家は沢山の乳牛を飼育している酪農家だった。牧草地帯にポツンとある酪農家、これがグラップの家だ。   牧場の敷地に入ると、とても獣臭い…。沢山の農機具や私の身長より大きい直径のタイヤを履いた、戦車みたいに大きなトラクターが置いてある。 木の柵で仕切られている草地の中で沢山の乳牛、白黒斑紋のホルスタインが顔を上げて横座りで寝ており、敷地に入って中に進んで行く私とハルをジ~ッと見つめている。見知らぬ客が珍しいらしい。中には好奇心で柵の傍まで駆け寄ってジ~ッと見つめて来る牛もいてとても可愛い。闇夜でも牛はハッキリと私達が見えているみたいだ。その可愛い仕草に私は笑みがこぼれる。   牧場の建物の中には明かりがついている。グラップの両親らしい人が鎖で繋がれた牛に餌をやったり、乳搾りをしている。とても忙しそうだ。   ハルは牛にフォークを使って草をやっているグラップのお父さんに話かけた。   「こんばんわ~。グラップ君は何処にいますか?」   お父さんは手を止め、ハルや私を睨みつけるようにシゲシゲ見つめ、敷地の奥を指差した。   「息子なら格納庫におる」   何だかちょっと無愛想なお父さんである。仕事中だから機嫌が悪いのかな?ハルはお父さんにお辞儀をした。私も続いてお辞儀をした。お父さんは黙々と作業を始めた。   そして、私とハルは敷地の奥の格納庫に進んで行った。大きな鉄扉のしっかりした格納庫。扉の隙間から明かりと、ラジカセの音が漏れている。可愛い女声の歌が聞こえる。   「貴~方を🎵吸い付くしてしまおうと思ったけ~れど🎵やめておく~わ🎵何だか🎵勿体無~いんだもん🎵」   …この曲知ってる…この可愛い声の曲…今話題の可愛いアイドルの…。
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