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回覧板にはメモ帳が一枚挟まっており、「不審者の情報あり。戸締まりを各家庭で強化してください」と殴り書きがされていた。 ふぅんと、一度頷いて団扇代わりに扇いだ。 梅雨が開けて夏も本気を出し始めていたので、思うほどの効果はなかった。 そろそろ自分の部屋にクーラーが欲しいなと、頭の隅で思ったが、扇風機の風太くんがあるじゃないかと、その考えを打ち消した。  三四子さんの作ったカレーは、いつも通り美味しかった。 なんでも、特製の隠し味があるらしい。 帰宅した父さんと一緒に食卓を囲ったとき、三四子さんはそう嬉しそうに言っていた。 「大ちゃん、お隣の風見さんに回覧板持ってって」  夕飯も食べ終わり、風呂にでも入ろうかと思っていたオレに、父さんは言った。 「えー?オレはいまから風呂に入ろうと思ってたんだけど」 「入る前に、サッと行ってきてよ。サッと」 父さんが台拭きをオレの方へ差し出した。 「それとも大ちゃんが台拭きする?」  流れに乗ったのか、三四子さんも「それなら大介が洗い物変わってくれる?私が持って行くから」と言ってきたもんだから、素直に回覧板を持っていくことにした。  台所に隣接した裏口。 そこで靴を履いた。
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