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 ゾワゾワと、どこか畏怖にも似た不気味な感情が、歩の背筋を駆け抜ける。ケラケラと笑っているようにも見られる骸骨は、もはや皮肉の欠片もない手で闇恵の頬を撫でた。 「この子が怖いの?」  クスクスと空笑いをしながら、骸の頭蓋にキスをする闇恵。恐らく、この骸骨こそが彼女の最も忌み嫌う幻魔なのだろう。そんな対象と愛しそうにスキンシップする闇恵に、歩は声も出なかった。 「……この眼が、魔術師の眼ですか?」 「ええ。他に違和感はない?」  身体中を見回しても、特に変化が訪れた箇所はない。それを闇恵に伝えると、「おかしいわね」と顎に手を当てて考える。  確かに歩の身体には闇恵のように幻魔とおぼしきものが見て取れない。視線の先では骸骨がこちらに向けて手を差し出している。こうして見ていると、まるで人肉を求めて止まない魔物そのものだった。 「……あるいは魔眼に」 「魔眼?」 「い、いえ、何でもないわ。それよりも歩君、試しに私の幻魔に触ってみる?」  ゆったりとした歩調で、闇恵が歩に近づいて来た。それに伴い、当然のように骸骨も近づいて来る。そして、骸骨が目と鼻の先の位置にまで来た時、 「ひぁっ!」  優しく包み込むようにして、骸骨が歩の身体を抱いた。半ば覆い被さるようではあったが、確かに歩は幻魔に触れた。同時に闇恵の口から溜め息が漏れる。 「……やっぱりね。歩君、本来なら魔術師であっても、自分の拘束した幻魔以外に触れることはできないの。でも貴方はそれを可能にした。何故だかわかる?」 「魔術師の眼が幻魔を物質として捉えているからですか」  恐ろしいほどに辻褄の合う返答に、歩は冷や汗を感じた。それに呼応するように骸骨の顎部がカチカチと鳴る。
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