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 闇恵は目を伏せて、数秒黙考した後、静かに頷いた。そして彼女は歩にその眼が、ある特定の環境下で発動することができる魔眼であることを伝え、性質、能力、さらには人体に及ぼす影響についてまでを丁寧に説明した。 「幻触の魔眼。私はこれからその力をそう呼ぶわ」  どこか、自分に言い聞かせるようにしてそう付け加える彼女は、再びキセルを手にとる。刻みタバコを詰めて火を点し、一服すると白煙を吐き出す。  視覚云々の話をされてしまうと、それこそ脳、眼球、その他諸々の器官についての知識を詰め込まなければならない。だが、魔眼として成立してしまった彼の瞳には身体的な異常など見られないらしい。曰く、闇恵の幻魔がそれを可能にしたのだとか。曰く、元々歩の魔眼に備わっていた力によるものなのだとか。そんな途方もない予想を彼女は諸説として彼に教えたのだ。 「幻触の魔眼。人を殺す能力として、これからこの力を使っていかなければならないんですね」 「それは貴方次第だわ。私はその力の全てを知っているわけじゃないし、その使い方を限定する権利もない」  それに、貴方は自分から殺戮者になることを望んだはずよ、と続けざまに付け加え、歩の覚悟を再確認する。歩が戸惑いながらも頷くと、少し表情を和らげて、彼女は手を差し伸べてきた。  歩は差し伸べられた彼女の手をしっかりと握り返し、その深紅の瞳を見上げた。どこまでも透き通っていて、心洗われるような美しい緋だった。
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