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「詰まる話は中でしましょ。あなたもおかしな輩を患っているようですしね」  振り向きもせず、そう告げる。歩にはそんな彼女の姿が、何も言わずに付いて来なさい、と語っているようにも見えた。  決意を固め、生唾を飲み込み、門の内側に足を踏み入れる。少し、ほんの少しだけ、身体にピリッと電気が駆け抜けたような気がしたが、気にせずに歩を進める。 「曾おじいさまの代に一度改築を試みてはみたんだけど、業者の人でもあの蔦をどかすことができなかったの。何故だかわかる?」  出し抜けに、闇恵が突拍子もない問いを出してきた。歩は少し考える素振りをすると、身も蓋もない返答をする。 「蔦が離れることを拒んだからですか?」  答えになっていない答えを返してしまった、と若干の後悔もさることながら、闇恵の反応は存外、至って真面目なものだった。 「そうね。蔦にも館に絡み付いているという現在がある。本来それは他者によって組み入ってはばかられるようなものじゃないの。つまり、貴方の言う通り、蔦は自身の意思によって除去されることを拒んだ。うん、貴方には才能があるようね」  蔦と才能の括り付けに関連性の有無を見出だせない歩は暫く無言のまま、前方を歩く美しい女性の後に付いて行った。  洋館は風情があるというよりは、どちらかと言えば不気味という表現の方が定着しやすい、そんな風貌を備えている。まるで、欧州の聖教の教会のようなずっしりとした重い雰囲気。それ全てを手の内に収める彼女は何者なのだろう、と歩は闇恵に対する疑問が次から次へと沸いてくる。 「着いたわ。さぁ、中に」  闇恵がそう呟いた時、玄関の門がぎしりと軋む音を立てながら開門された。内部の薄暗いホールがその隙間から垣間見える。
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