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「夢を喰らう悪魔、私は彼らを"幻魔"と呼んでいるわ」  漆黒のトンガリ帽子を脱ぎ、今まで見えなかった綺麗な黒髪がその姿を現せる。腰元まで伸びているのだろうか、魔女という比喩もあながち間違ってはいなかったようだ。彼女はそれほどまでにいい意味での魔性を秘めていた。 「その幻魔っていうのは夢を食べるんですよね? ちなみに夢を食べられたらどうなるんですか?」 「どうにもならないわ。少なくとも日常生活ではね」  あっけらかんと彼女が答えを返す。歩はその返答に、どうにも附に落ちない何かを感じ取る。  闇恵は歩の気持ちを察したのか、おもむろに立ち上がり、彼の額に手を伸ばしてきた。ピトッと彼女のひんやりとした指が額に触れる。 「問題は貴方の内側よ」  額に手を触れさせたまま、呟く。言い聞かせるような口調に歩は若干の違和感を覚えた。彼女の瞳の色も心なしか変化しているようにも思える。 「そうね、周りから見れば貴方の日常生活に何の変化も見られないでしょうね。でも、貴方の中身はどうなると思う?」 「……乗っ取られるとか?」  気乗りしないが、思いつく答えはこれしかなかった。すると闇恵が指をパチンと鳴らし、脱いだ帽子を歩に被せる。 「ご名答。やっぱり貴方、才能があるわ」  先の見えない会話。その果てにある解答が全くもって予測できない。歩の夢に幻魔が住まうというのなら、黒乃闇恵と名乗った不思議な女性が特殊なチカラを有しているというのなら、早々にこの悪魔を除去して欲しいというのが、今の彼の正直な思いだった。 「ふふ、そうね。確かに早々とこんな厄介な化物にはご退散願いたいものね。だけど……」  闇恵が言葉に詰まる。何か言ってはばかられるようなことでもあるのだろうか。歩の不安が少し色濃さを増す。
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