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「私はね、左胸部。つまりは心の臓ね。体循環を司る器官を幻魔の拘束部位としたの。いろんな理由が合い重なって、今じゃ不老不死になっちゃったけど」
「不老不死、ですかぁ?」
歩も不老不死という語句は聞いたことがある。永遠に老いることなく、それでいて死ぬこともない。だが、そんな非現実的なものはマンガの世界だけの特権だと思っていた。
そんなことを考えていると、闇恵がこっちを見なさい、と背面を晒す歩に指示をしてきた。歩はなるだけ彼女の着替えが済んでいることを祈りながら、ゆっくりと振り返る。が、
「……ちょっ! 闇恵さん、服着てくださいよ!」
「いいから見なさい」
半ば強引に、闇恵に彼女自身の裸体を見せつけられた。そして気付く。彼女の左胸部、左乳房の少し上の位置に暗黒を思わせるような、異形のタトゥーが彫り込まれていることに。
唖然として、傷物になった女性の左乳房を凝視する。まるで痛々しい傷跡を隠すように彫り込まれたタトゥーは、彼女の綺麗な裸体を放射状に侵していた。
「わかる? 魔術師になるために私は身体を傷物にした。当然貴方も身体のどこかがこうなるわ。それも踏まえて、よく考えることよ」
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